文部科学省 科学研究費補助金

公募研究

これまで細胞死は細胞の一生の最終過程であり、生じた死細胞は単に捨て去られる存在であると考えられてきた。ところが近年、この死細胞が実は情報の発信源となり、免疫応答、炎症、修復、再生、線維化といった細胞死後に起こる様々な生体応答の起点となっていることが明らかとなってきた。
本領域では、この死細胞から発信されるメッセージをダイイングコードと名付け、その同定と機能解析を通して、細胞死を起点とする生体制御ネットワークの全容の解明を目指す。生体に存在する複数の細胞死プログラムが、それぞれどのような生理的•病理的状況で実行されるのかを明らかにするとともに、各細胞死に固有のダイイングコードが、細胞死後の生体応答に果たす役割を明らかにする。これらの解析により、最終的に生体内での各細胞死プログラムの存在意義を詳らかにすることを目指す。
このため、以下の研究項目について、「計画研究」により重点的に研究を推進するとともに、これらに関連する2年間の研究を公募する。1年間の研究は公募の対象としない。また、研究分担者を置くことはできない。
公募研究の採択目安件数は、単年度当たりの応募額500万円を上限とする研究を6件程度、300万円を上限とする研究を8件程度予定している。
特に、組織傷害後の再生や修復に関与するダイイングコードの研究、マウス疾患モデルやヒト疾患の病態を規定する新規ダイイングコードの同定とその役割に関する研究、モデル動物を用いて発生や再生における細胞死およびダイイングコードの意義を明らかにする研究、および細胞死イメージング研究を歓迎する。また、これまでの枠にとらわれない、独創的な研究を展開する若手研究者の積極的な応募を期待する。

 

(研究項目)
A01:多様な細胞死の分子機構と生体内での補足
種々の細胞死が実行される分子メカニズムを解明することにより、各細胞死の特異性を分子レベルで定義し、それぞれの細胞死をマウス生体内で特異的に検出するシステムを構築する。また、各細胞死の実行に必要な特異的遺伝子の欠損マウスの作製や細胞死阻害剤の開発を通して、個々の細胞死の生理的・病理的役割を明らかにする。

 

細胞死を起点とするダイイングコード授受の1細胞実時間イメージングと遺伝子発現解析

HP用写真白崎先生

研究代表者 白崎善隆 (東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻)

http://www.biochem.s.u-tokyo.ac.jp/uemura-lab/japanese/home_ja.html

細胞死に伴い細胞外に放出されるダイイングコードは、感染時に免疫応答を惹起することが知られています。本研究では、ダイイングコードの授受を1細胞の分解能で検出する1細胞分泌実時間イメージング法と1細胞RNAシーケンス法を駆使し、ダイイングコードを授受した細胞内ではどのような遺伝子発現変化が生じているのかを明らかにすることを目指します。

 

1. Liu T, Yamaguchi Y, Shirasaki Y, Shikada K, Yamagishi M, Hoshino K, Kaisho T, Takemoto K, Suzuki T, Kuranaga E, Ohara O, *Miura M.

Real-time single cell analysis provides direct evidence that digital activation of caspase-1 couples macrophage cell death and IL-1b secretion.

Cell Rep. 8: 974-82. 2014

2. Shirasaki Y, Yamagishi M, Suzuki N, Izawa K, Nakahara A, Mizuno J, Shoji S, Heike T, Harada Y, Nishikomori R, *Ohara O.

Real-time single-cell imaging of protein secretion.

Sci. Rep. 4: 4736. 2014

 

活性酸素誘導性ネクローシスにおける細胞死誘導シグナルの捕捉と可視化

佐藤先生写真

研究代表者 佐藤伸一 (東京工業大学科学技術創成研究院化学生命科学研究所)

http://syn.res.titech.ac.jp/

計画的ネクローシスに共通する細胞死シグナルとしての活性酸素に着目し、細胞死に関わる活性酸素代謝における酸化的な細胞死誘導シグナルを捕捉する。我々が見出した“一電子酸化反応によるラジカル的なタンパク質ラベル化”という有機化学反応を活用し、ケミカルバイオロジーの手法によって活性酸素の代謝経路・細胞損傷メカニズムの解明、新規細胞死制御剤の開発に取り組む。

 

1. Sato S, Nakamura K, Nakamura H.

Horseradish-Peroxidase-Catalyzed Tyrosine Click Reaction.

Chem. Bio. Chem. 18: 475-8. 2017

2. Sato S, Nakamura K, Nakamura H.

Tyrosine-Specific Chemical Modification with in Situ Hemin-Activated Luminol Derivatives.

ACS Chem. Biol. 10: 2633-40. 2015

 

統合的ストレス応答による肝再生過程の細胞死様式の調節メカニズムの解明

HP用写真井上先生

研究代表者 井上 啓 (金沢大学新学術創成研究機構革新的統合バイオ研究コア栄養・代謝研究ユニット)

http://inoue.w3.kanazawa-u.ac.jp/index.html

脂肪肝では、障害からの再生が障害される。脂肪肝での再生障害は、統合的ストレス応答による肝細胞死の増加と関連する。軽度脂肪肝では、統合的ストレス応答は軽微で孤発性肝細胞死が誘導されるが、高度脂肪肝では、統合的ストレス応答も強く、広汎肝細胞死が誘導される。本研究では、脂肪肝の多寡による細胞死制御の仕組みを解明する。主に、統合的ストレス応答で誘導される転写因子CHOPやATF3の役割を検討する。

 

1. Kimura K, Tanida M, Nagata N, Inaba Y, Watanabe H, Nagashimada M, Ota T, Asahara S, Kido Y, Matsumoto M, Toshinai K, Nakazato M, Shibamoto T, Kaneko S, Kasuga M, Inoue H.

Central Insulin Action Activates Kupffer Cells by Suppressing Hepatic Vagal Activation via the Nicotinic Alpha 7 Acetylcholine Receptor.

Cell Rep. 14: 2362-74. 2016

2. Inaba Y, Furutani T, Kimura K, Watanabe H, Haga S, Kido Y, Matsumoto M, Yamamoto Y, Harada K, Kaneko S, Oyadomari S, Ozaki M, Kasuga M, *Inoue H.

Gadd34 regulates liver regeneration in hepatic steatosis.

Hepatology 61: 1343-56. 2015

 

LUBACによる細胞死とIL-1b産生調節機構の解析

佐々木義輝先生写真HP用

研究代表者 佐々木義輝 (京都大学大学院医学研究科細胞機能制御学)

http://www.mcp.med.kyoto-u.ac.jp

直鎖状ポリユビキチン鎖は、ユビキチンリガーゼ複合体LUBACによって選択的に生成されNF-κBの活性化や細胞死を抑制する機能を持つ。LUBAC欠損マクロファージがLPS刺激によって細胞死を起こすと同時に成熟型IL-1βを産生する事を発見した。そこで本研究では、LUBACによるLPS刺激依存的な細胞死と成熟型IL-1β産生の制御機構を明らかにするとともに、個体レベルでLUBAC欠損マクロファージが炎症反応にどのように関与するのかを解析する。

 

1. Sasaki Y, Sano S, Nakahara M, Murata S, Kometani K, Aiba Y, Sakamoto S, Watanabe Y, Tanaka, K, Kurosaki T, Iwai K.

Defective immune responses in mice lacking LUBAC-mediated linear ubiquitination in B cells.

EMBO J. 32: 2463-76. 2013

2. Calado DP, Sasaki Y, Godinho SA, Pellerin A, Köchert K, Sleckman BP, de Alborán IG, Janz M, Roding S, *Rajewsky K.

The cell-cycle regulator c-Myc is essential for the formation and maintenance of germinal centers.

Nat. Immunol. 13: 1092-100, 2012

 

リン脂質の膜動態と細胞死

瀬川先生HP用写真

研究代表者 瀬川勝盛 (大阪大学免疫学フロンティア研究センター免疫・生化学部門)

http://biochemi.ifrec.osaka-u.ac.jp

ホスファチジルセリン(PtdSer)は細胞膜の脂質二重層(外層と内層)を構成するリン脂質であり、外層と内層における局在を変化させることで細胞内外に多様なシグナルを伝達する。我々は、細胞膜におけるPtdSerの局在を制御する分子・細胞膜フリッパーゼを同定した。本研究では、PtdSerの膜動態を統合的に理解すること、細胞膜フリッパーゼの遺伝子欠損により引き起こされる病態を解明することを目指す。

 

1. Segawa K, Kurata S, Nagata S.

Human Type-IV P-type ATPases that work as plasma membrane phospholipid flippases and their regulation by caspase and calcium.

J. Biol. Chem. 291: 762-72. 2016

2. Segawa K, Kurata S, Yanagihashi Y, Brummelkamp T, Matsuda F, Nagata S.

Caspase-mediated cleavage of phospholipid flippase for apoptotic phosphatidylserine exposure.

Science 344: 1164-8. 2014

 

細菌含有膜破壊によるパイロトーシス誘導・制御メカニズムの解明

HP用写真山本先生

研究代表者 山本雅裕 (大阪大学微生物病研究所感染病態分野/大阪大学免疫学フロンティア研究センター免疫寄生虫学)

http://www.biken.osaka-u.ac.jp/lab/immpara/index.html

細菌感染によって引き起こされるパイロトーシスとインフラマソームの活性化は、細菌感染防御免疫応答に重要である。本研究においては、未だ機序がよくわかっていない、実際の細菌感染により誘導されるパイロトーシスの最も上流の必須イベントである病原体含有膜破壊機構を担当する分子及びその制御機構の生理的意義の解明を目的とする。

 

1. Ohshima J, Sasai M, Liu J, Yamashita K, Ma JS, Lee Y, Bando H, Howard JC, Ebisu S, Hayashi M, Takeda K, Standley DM, Frickel EM, Yamamoto M.

RabGDIα is a negative regulator of interferon-γ-inducible GTPase-dependent cell-autonomous immunity to Toxoplasma gondii.

Proc Natl Acad Sci USA. 112: E4581-90. 2015

2. Man SM, Man SM, Karki R, Sasai M, Place DE, Kesavardhana S, Temirov J, Frase S, Zhu Q, Malireddi RK, Kuriakose T, Peters JL, Neale G, Brown SA, Yamamoto M, Kanneganti TD.

IRGB10 Liberates Bacterial Ligands for Sensing by the AIM2 and Caspase-11-NLRP3 Inflammasomes.

Cell. 167:382-96. 2016

 

低分子化合物で探るマクロファージの炎症誘導性細胞死の機構

武田先生HP用写真

研究代表者 武田弘資 (長崎大学大学院医歯薬学総合研究科細胞制御学分野)

http://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/lab/cell/index-j.html

炎症初期におけるマクロファージの細胞死は、炎症を積極的に惹起する際に重要な役割を担っています。その「炎症誘導性細胞死」は受動的な細胞死ではなく、制御された積極的な細胞死と考えられていますが、その包括的な理解にはまだ至っていません。私たちは最近、マクロファージの炎症誘導性細胞死を強力に抑制するいくつかの低分子化合物を見出したことから、それらをツールとしてその細胞死の機構の解明を目指します。

 

1. Honda S, Sadatomi D, Yamamura Y, Nakashioya K, Tanimura S, Takeda K.

WP1066 suppresses macrophage cell death induced by inflammasome agonists independently of its inhibitory effect on STAT3.

Cancer Sci. 108: 520-7. 2017

2. Sadatomi D, Nakashioya K, Mamiya S, Honda S, Kameyama Y, Yamamura Y, Tanimura S, Takeda K.

Mitochondrial function is required for extracellular ATP-induced NLRP3 inflammasome activation.

J. Biochem. in press. 2017

 

脂質酸化依存的新規細胞死(リポキシトーシス)実行因子の細胞及び個体での機能解析

HP用写真今井先生

研究代表者 今井浩孝 (北里大学薬学部衛生化学教室)

http://www.pharm.kitasato-u.ac.jp/eisei/eisei/Top_page.html

GPx4は酸化されたリン脂質を直接還元できるグルタチオンペルオキシダーゼである。GPx4を様々な組織で欠損させると、脂質酸化依存的新規細胞死を誘導する。GPx4欠損細胞死は抗がん剤によるフェロトーシスとは異なる細胞死であることから、リポキシトーシスと名付けた。本研究では我々が見出したリポキシトーシス実行因子lipo遺伝子の細胞、個体レベルでのリポキシトーシスにおける機能について明らかにする。

 

1. Imai, H., Matsuoka, M., Kumagai, T., Sakamoto, T. and Koumura, T.

Lipid peroxidation-dependent cell death regulated by GPx4 and Ferroptosis.

Curr. Top. Microbial. Immunol. 403: 143-170. 2017

2. Sakai O, Uchida T, Imai H, Ueta T.

Role of glutathione peroxidase 4 for oxidative homeostasis and wound repair in corneal epithelial cells.

FEBS Open. Bio. 6: 1238-47. 2016

 

好中球細胞外トラップを誘導する細胞死メカニズムの解明

上岡先生HP用写真

研究代表者 上岡裕治 (関西医科大学附属生命医学研究所分子遺伝学部門)

http://www3.kmu.ac.jp/molgent/

好中球は、自身のクロマチンから成る高粘着性構造体「好中球細胞外トラップ(NETs)」の放出を伴ったダイナミックな細胞死プログラム「NETosis」を行う。NETosisは自己免疫疾患や癌転移、外科手術後の急性障害の原因となる。本研究では蛍光生体イメージングを駆使し、NETosisに向かうシグナル伝達機構、細胞骨格変化、DNA放出メカニズムの解明を目指す。
1. Kamioka Y, Takakura K, Sumiyama K, Matsuda M.

Intravital Förster resonance energy transfer imaging reveals osteopontin‐mediated polymorphonuclear leukocyte activation by tumor cell emboli

Cancer Sci. 108: 226–35. 2017

2. Mizuno R, Kamioka Y, Kabashima K, Imajo M, Sumiyama K, Nakasho E, Ito T, Hamazaki Y, Okuchi Y, Sakai Y, Kiyokawa E, Matsuda M.

In vivo imaging reveals PKA regulation of ERK activity during neutrophil recruitment to inflamed intestines.

J. Exp. Med. 211:1123-36. 2014

 
A02:細胞死を起点とする生体応答とその異常
多様な死細胞を起点とするシグナルを探索・同定し、それらのシグナルの生成機構およびそれぞれの因子が担う免疫応答、炎症、修復、再生、線維化といった生体応答を明らかにする。また、それらのシグナルが誘導する有益な生体応答と、その破綻に伴う疾患の発症機構を解析し、疾患の診断や治療法確立への応用も目指す。

 

細胞死に伴い産生されるリゾリン脂質の機能解明

青木先生HP用写真

研究代表者 青木淳賢 (東北大学大学院薬学研究科分子細胞生化学分野

http://www.pharm.tohoku.ac.jp/~seika/H28/index.html

脂質の機能の一つに、細胞間のシグナル分子としての役割があります。私たちは、新しいタイプのシグナリング脂質、特に、GPCRを介して作用を発揮するリゾリン脂質に注目し、その受容体、産生酵素の同定を通じ、リゾリン脂質の病態生理機能を明らかにしてきました。このような研究の中で、ある種のリゾリン脂質は細胞死に伴い産生されることがわかってきました。本研究では、細胞死に伴い産生されるリゾリン脂質機能の解明を通じ、ダイイングコード領域に貢献したいと考えています。

 

1. Umezu-Goto M, Kishi Y, Taira A, Hama K, Dohmae N, Takio K, Yamori T, Mills GB, Inoue K, Aoki J, Arai H.

Autotaxin has lysophospholipase D activity leading to tumor cell growth and motility by lysophosphatidic acid production.

J. Cell. Biol. 158: 227-33. 2002

2. Bandoh K, Aoki J, Hosono H, Kobayashi S, Kobayashi T, Murakami-Murofushi K,Tsujimoto M, Arai H, Inoue K.

Molecular cloning and characterization of a novel human G-protein-coupled receptor, EDG7, for lysophosphatidic acid.

J. Biol. Chem. 274: 27776-85. 1999

 

アポトーシス細胞の貪食シグナルに対する負の制御機構とその生理的意義の解明

小田ちぐさ先生HP用写真

研究代表者 小田ちぐさ (筑波大学医学医療系生命医科学域免疫制御医学

http://immuno-tsukuba.com

アポトーシス細胞の貪食は、貪食細胞上の Phosphatidylserine (PS) 受容体が主に担っているが、その制御機構については充分に解明されていない。最近私達は、マクロファージに発現する新しいPS受容体、CD300aがPSと結合して貪食を抑制している、という現象を見いだした。現在、そのメカニズムと、生理学的、病理学的意義を明らかにしようとしている。

 

1. Nakahashi-Oda C, Udayanga KGS, Nakamura Y, Nakazawa Y, Miki H, Iino S, Tahara-Hanaoka S, Shibuya K, Shibuya A.

Apoptotic epithelial cells control the abundance of Treg cells at barrier surfaces.

Nat. Immunol. 17: 441-50. 2016

2. Honda S, Sato K, Totsuka N, Fujiyama S, Fujimoto M, Miyake K, Nakahashi-Oda C, Tahara-Hanaoka S, Shibuya K, Shibuya A.

Marginal zone B cells exacerbate endotoxic shock via interleukin-6 secretion induced by Fcα/μR-coupled TLR4 signalling.

Nat. Commun. 7: 11498. 2016

 

組織幹/前駆細胞の分化による肝臓の再生応答を惹起するダイイングコードの解明

HP用写真伊藤先生

研究代表者 伊藤 暢 (東京大学分子細胞生物学研究所発生・再生研究分野

http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/cytokine/

重篤・慢性的な障害を受けた肝臓は、組織中の幹/前駆細胞が新たに肝細胞を生み出すことで再生すると考えられています。そうした肝再生過程はこれまでマウスモデルでは再現できておらず、解析が進んでいませんでした。我々は、これを実現した新規マウスモデルを用いて、肝細胞の細胞死を起点として幹/前駆細胞の活性化および肝細胞への分化を誘導するダイイングコードの同定と、肝再生の新たなメカニズムの解明を目指します。

 

1. Kamimoto K, Kaneko K, Yuet-Yin Kok C, Okada H, Miyajima A, Itoh T.

Heterogeneity and stochastic growth regulation of biliary epithelial cells dictate dynamic epithelial tissue remodeling.

eLife 5: e15034. 2016

2. Itoh T.

Stem/progenitor cells in liver regeneration.

Hepatology. 64: 663-8. 2016

 

ダイイングコードによる組織破壊・修復バランスの制御機構の解明

菅波先生HP用写真

研究代表者 菅波孝祥 (名古屋大学環境医学研究所分子代謝医学分野

http://www.riem.nagoya-u.ac.jp/4/mmm/index.html

過栄養により惹起される慢性炎症の結果、脂肪組織や肝臓などの代謝臓器において間質線維化が生じる。我々は、特徴的な組織像(CLS: crown-like structure)が、肥満や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)など代謝性に誘導される間質線維化の起点となることを見出した。本研究では、CLSにおける死細胞とマクロファージの相互作用の分子メカニズムを明らかにする。

 

1. Tanaka M, Ikeda K, Suganami T, Komiya C, Ochi K, Shirakawa I, Hamaguchi M, Nishimura S, Manabe I, Matsuda T, Kimura K, Inoue H, Inagaki Y, Aoe S, S. Yamasaki S, Ogawa Y.

Macrophage-inducible C-type lectin underlies obesity-induced adipose tissue fibrosis.

Nat. Commun. 5: 4982. 2014

2. Itoh M, Suganami T, Nakagawa N, Tanaka M, Yamamoto Y, Kamei Y, Terai S, Sakaida I, Ogawa Y.

Melanocortin-4 receptor-deficient mice as a novel mouse model of non-alcoholic steatohepatitis.

Am. J. Pathol. 179: 2454-63. 2011

 

切断軸索からのダイイングコード

HP用写真久本先生

研究代表者 久本直毅 (名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻生体機序論講座

http://bunshi3.bio.nagoya-u.ac.jp/~bunshi6/matsumoto_japanese/index.html

神経は物理的に切断された軸索を再生させる能力を潜在的に有しており、その機構は種を超えて保存されている。我々は最近、線虫C.エレガンスをモデルとして、切断された神経軸索が「死を意味するシグナル」を用いて神経軸索再生を促進することを発見した。本研究では、その仕組みの詳細について解析することにより、死と再生の間に存在する制御メカニズムについて明らかにする。

 

1. Pastuhov SI, Fujiki K, Tsuge A, Asai K, Ishikawa S, Hirose K, Matsumoto K, Hisamoto N.

The core molecular machinery used for engulfment of apoptotic cells regulates the JNK pathway mediating axon regeneration in Caenorhabditis elegans.

Neurosci. 36: 9710-21. 2016

2. Li C, Hisamoto N, Nix P, Kanao S, Mizuno T, Bastiani M, Matsumoto K.

The growth factor SVH-1 regulates axon regeneration in C. elegans via the JNK MAPK cascade.

Nat. Neurosci. 15: 551-7. 2012

 

死細胞が残した細胞間シグナルネットワークを介した創傷治癒制御

榎本先生HP用写真

研究代表者 榎本将人 (京都大学大学院生命科学研究科システム機能学分野

http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/genetics/

創傷治癒は、代償性増殖、組織リモデリングや細胞運命転換といった多様な生体プロセスが有機的に機能する複雑な生命現象である。すなわち、創傷治癒過程では個々の細胞は互いにコミュニケーションすることで組織損傷の修復や再生を時空間的に制御している。本研究では、ショウジョウバエをモデルとして死細胞が形成した生存細胞間のシグナルネットワークによる創傷治癒の動的制御の解明を目指します。

 

1. Enomoto M, Kizawa D, Ohsawa S, Igaki T.

JNK signaling is converted from anti- to pro-tumor pathway by Ras-mediated switch of Warts activity.

Dev. Biol. 403: 162-71. 2015

2. Enomoto M, Igaki T.

Src controls tumorigenesis via JNK-dependent regulation of the Hippo pathway in Drosophila.

EMBO Rep, 14: 65-72. 2013

 

障害ミトコンドリアからのダイイングコード漏出による脂肪性肝疾患の進展機序の解明

竹原先生HP用写真

研究代表者 竹原徹郎 (大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学

http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/gh/resarch.html

本研究課題では、ミトコンドリアからのミトコンドリアDNA(mtDNA)を始めとするダイイングコードの細胞質への漏出が、脂肪性肝疾患の病態進展(肝臓の炎症・線維化・発癌)に与える影響を明らかにする。本研究の遂行を通じて、障害ミトコンドリアからのダイイングコード漏出という視点から脂肪性肝疾患の病態進展を検討し、ダイイングコードの制御を標的とした、脂肪性肝疾患に対する新規治療戦略の開発につなげる。

 

1. Tanaka S, Hikita H, Tatsumi T, Sakamori R, Nozaki Y, Sakane S, Shiode Y, Nakabori T, Saito Y, Hiramatsu N, Tabata K, Kawabata T, Hamasaki M, Eguchi H, Nagano H, Yoshimori T, Takehara T.

Rubicon inhibits autophagy and accelerates hepatocyte apoptosis and lipid accumulation in nonalcoholic fatty liver disease in mice.

Hepatology. 64:1994-2014. 2016

2. Hikita H, Kodama T, Shimizu S, Li W, Shigekawa M, Tanaka S, Hosui A, Miyagi T, Tatsumi T, Kanto T, Hiramatsu N, Morii E, Hayashi N, Takehara T.

Bak deficiency inhibits liver carcinogenesis: a causal link between apoptosis and carcinogenesis.

J. Hepatol. 57:92-100. 2012

 

筋線維芽細胞による死細胞の貪食が組織の線維化に及ぼす影響の解析

仲矢先生HP用写真

研究代表者 仲矢道雄 (九州大学大学院薬学研究院薬効安全性学分野

http://chudoku.phar.kyushu-u.ac.jp/

我々は、組織の線維化を実行するのみと考えられてきた、筋線維芽細胞が、マクロファージと同様に死細胞を貪食し、炎症を抑制するという、「貪食細胞」としての役割を果たす事を見出した。そこで本研究では、筋線維芽細胞を「貪食細胞」して捉え直し、組織傷害時における、筋線維芽細胞の死細胞貪食による性質の変化およびその変化が周囲の細胞に及ぼす影響の解明を目指す。

 

1. Nakaya M, Watari K, Tajima M, Nakaya T, Matsuda S, Ohara H, Nishihara H, Yamaguchi H, Hashimoto A, Nishida M, Nagasaka A, Horii Y, Ono H, Iribe G, Inoue R, Tsuda M, Inoue K, Tanaka A, Kuroda M, Nagata S, Kurose H.

Cardiac myofibroblast engulfment of dead cells facilitates recovery after myocardial infarction.

J. Clin. Invest. 127: 383-401. 2017

2. Nakaya M, Tajima M, Kosako H, Nakaya T, Hashimoto A, Watari K, Nishihara H, Ohba M, Komiya S, Tani N, Nishida M, Taniguchi H, Sato Y, Matsumoto M, Tsuda M, Kuroda M, Inoue K, Kurose H.

GRK6 deficiency in mice causes autoimmune disease.

Nat. Commun. 4: 1532. 2013

 

成体脳のニューロン再生における死細胞の貪食過程とその意義

澤本先生HP用写真

研究代表者 澤本和延 (名古屋市立大学大学院医学研究科再生医学分野/自然科学研究機構生理学研究所神経発達・再生機構研究部門

http://k-sawamoto.com/

脳内で嗅覚情報を処理する嗅球においては、成体においても継続的にニューロンの細胞死とニューロン再生が起こっている。以前我々は、嗅球ニューロンが細胞死によって除去され、同じ場所に同じ種類のニューロンが再生するという嗅覚入力依存的なメカニズムを見出した。本課題では、死んだニューロンを除去して新しいニューロンの再生を助けるミクログリアの役割を研究する。

 

1. Kaneko N, Sawada M, Sawamoto K.

Mechanisms of neuronal migration in the adult brain.

J. Neurochem. 2017

2. Fujioka T, Kaneko N, Ajioka I, Nakaguchi K, Omata T, Ohba H, Fässler R, García-Verdugo JM, Sekiguchi K, Matsukawa N, Sawamoto K.

β1 integrin signaling promotes neuronal migration along vascular scaffolds in the post-stroke brain.

EBioMedicine 16: 195-203. 2017

 

細胞死によって誘導される脳梗塞後の神経修復メカニズム

七田先生HP用写真

研究代表者 七田 崇 (東京都医学総合研究所脳卒中ルネサンスプロジェクト

http://www.igakuken.or.jp/project/detail/stroke-renaiss.html

脳梗塞は、深刻な後遺症や寝たきりの主な原因となっています。脳梗塞では大量の脳細胞死によって炎症が起こりますが、7日後には炎症が収束して修復に向かうというダイナミックな変化が観察されます。前回の公募研究では、脳内における炎症惹起因子の排除が、炎症の収束に重要であることを証明しました。本研究はこれを発展させて、炎症が神経修復作用に転換する分子メカニズムを解明して、新たな脳梗塞治療法の開発を目指します。

 

1. Shichita T, Ito M, Morita R, Komai K, Noguchi Y, Ooboshi H, Koshida R, Takahashi S, Kodama T, Yoshimura A.

Mafb prevents excess inflammation after ischemic stroke by accelerating clearance of danger signals through MSR1.

Nat. Med. in press. 2017

2. Shichita T, Hasegawa E, Kimura A, Morita R, Sakaguchi R, Takada I, Sekiya T, Ooboshi H, Kitazono T, Yanagawa T, Ishii T, Takahashi H, Mori S, Nishibori M, Kuroda K, Miyake K, Akira S, Yoshimura A.

Peroxiredoxin family proteins are key initiators of post-ischemic inflammation in the brain.

Nat. Med. 18: 911-7. 2012

 

パイロトーシスが関与する稀少疾患の新規遺伝子変異同定と病態解明

北浦先生HP用写真

研究代表者 北浦次郎 (順天堂大学大学院医学研究科アトピー疾患研究センター

http://www.juntendo.ac.jp/graduate/laboratory/labo/atopy_center/

我々は、肝臓線維化を主徴とする稀少疾患患者から同定された遺伝子のde novo変異がNLRP1インフラマソームを過剰に活性化させることを見出した。本研究ではNLRP1インフラマソーム活性化亢進の分子メカニズムを解明するとともに、NLRP1インフラマソームの活性化によるIL-1β・IL-18の産生とパイロトーシスの亢進がどのように病態と結びつくかを明らかにする予定である。

 

1. Matsukawa T, Izawa K, Isobe M, Takahashi M, Maehara A, Yamanishi Y, Kaitani A, Okumura K, Teshima T, Kitamura T, Kitaura J.

Ceramide-CD300f binding suppresses experimental colitis by inhibiting ATP-mediated mast cell activation.

Gut 65: 777-87. 2016

2. Izawa K, Yamanishi Y, Maehara A, Takahashi M, Isobe M, Ito S, Kaitani A, Matsukawa T, Matsuoka T, Nakahara F, Oki T, Kiyonari H, Abe T, Okumura K, Kitamura T, Kitaura J.

The receptor LMIR3 negatively regulates mast cell activation and allergic responses by binding to extracellular ceramide.

Immunity. 37: 827-39. 2012